あえて人の動きを制限することで広がる作品の可能性

アニメに見る「静止画」の力

映画にはさまざまなジャンルがあって、映像の種類も多種多様です。
観客は自分の好みに合った映像に心地良さを感じたり、見慣れない映像に衝撃を受けたりして楽しみます。
一般的に、映画などの映像作品の特徴は「動き」を表現することであり、チャップリンなどの初期の映画を見ても分かる通り、映像の中で動き回る人の面白さは映画ならではのものと言えます。

特に実写映画であれば、登場人物の動きだけでなく、撮影するカメラの動きを組み合わせることで、躍動感や立体感が際立つ特徴もあるので、上手く演出に盛り込めばとても魅力的な作品になります。

しかし、冒頭で言った通り、映画の種類は豊富です。
極めて動きが少ないにも関わらずとても魅力的な作品も意外と多いんです。
分かりやすい例で言えばアニメーション作品。
通常、アニメーションはいかに細かく動きを表現するかに腐心します。
動きの細かさはそのままコストに跳ね返りますから、

  • 動きの細かいところ
  • あまり動かないところ

に分けてメリハリを出す演出も研究されています。

その最たるものが「静止画」をそのまま使ってしまう手法です。
作品のラストで映像が静止画になる演出は、現代劇・時代劇など古いテレビドラマやアニメーション作品などでもお馴染みで、コミカルな終わり方にもシリアスな終わり方にも相性が良く、とても多く見られます。

ところが、出崎統というアニメーション監督の作品では、ラストシーンでもないのにシーンの要所要所に静止画を挟む手法を多用しています。
アニメーション作品の中で動きのを無い静止画を使うのはとても逆説的で面白いのですが、これがとても効果的なんです。
ボクシングの激しい動きを描写している中で唐突に登場する静止画が、かえってその試合の激しさを感じさせたりします。
もちろんアニメーション作品ですから、その部分に関して言えばコストの削減も実現しているでしょう。
二重の意味で有効な手法と言えます。

「沈黙の艦隊」に見る「静」の映像の力

先日、アマゾンプライムで配信用に作られた全8話の「沈黙の艦隊」という作品を観ました。
漫画原作のこの作品は、過去にラジオドラマやアニメーションにもなっていて、面白さは折り紙付きです。
その実写版映画ということでとても楽しめました。
そこで特徴的だったのは、登場人物たちの動きが極端に少ない点です。
特にプロデューサー兼主演の大沢たかお演じる潜水艦の艦長は、ほとんどの場面で1歩も動かず直立不動で演じています。
実際、潜水艦は狭くてうろうろと歩き回れないですからリアルではあるんですが、通常であれば映像が単調になりがちで、間が持たない危険があるように思います。
ところが実際は、物語世界に入り込んでしまうとその「動きの少ない映像の連続」でもちっとも退屈しないんです。
これには作劇の魅力や役者の魅力も関係しますから一概には言えませんが、私たちの作るDIY映画でも応用が可能ではないでしょうか。

グリーンバック映像特有の映像設計

私が実践して推奨している「升田式スーパープリヴィズ法」は、映像の作り方がアニメーション作品にとてもよく似ています。
舞台劇やオーソドックスな映画撮影と違い、全ての場面で映像合成を前提とするので、場面の自由度が大幅に広がる半面、「動き」との連動が苦手という弱点があります。
基本的には手持ちカメラでの撮影で映像合成は出来ませんし、人物のグリーンバック撮影用のスペース確保の問題からも、人物が歩き回る場面はできるだけ少なくしたい、という事情があるんです。
「広い場所を確保すればいいだけでしょ?
と思われるかもしれませんが、実はスペースが広くなると照明の設置・設定も複雑になり、綺麗に合成できる映像が撮影しづらくなる側面もあるんです。
ですから、できるだけ歩く映像を少なくする工夫が必要であり、「沈黙の艦隊」での「役者の動きがない場面」の成功は参考になるんです。

実際のところ最重要なのは「物語」であり「話が面白ければ退屈しない」ということに尽きるわけですが、ここでは映像化する際に考慮すべき「映像上の工夫」を1つ紹介します。
人物の移動を表現するときの、「映像合成を前提にしたカット割り」です。

合成映像作りで大前提としてあるのは、「カメラは固定して撮影する」ということです。
あえて合成の不自然さも楽しみたいのであれば別ですが、私はそれを望んではいないので、出来る限り自然な映像に仕上げることを目標にした作り方を追求します。

例えば「大きな屋敷の庭を横切って、建物の前に立つ」という場面を考えてみます。

合成を使わずにオーソドックスに撮るのであれば、

  • 建物に向かって歩く人物の後ろ姿。その向こうに見えている屋敷

という構図を維持しながら、人物と一緒にカメラも移動するパターンが考えられます。
その後、

  • 立ち止まった人物の前にカメラが回り込み、表情をアップで捉える

というところまで1カットで表現することも可能です。

これと同じ内容を合成で表現するには、私なら以下のようなカット割りにします。

  • 屋敷と庭が映っている固定映像に入り込んでくる人物の後ろ姿(歩きは2、3歩)
  • 庭の地面の主観映像(合成無し。移動撮影)
  • 2、3歩だけ歩いて立ち止まり前を見上げる人物の顔アップ
  • 人物の背中越しに見上げた屋敷のアップ

いかがでしょうか?
広い庭を歩く映像は、実際にカメラマンだけで主観映像を撮影しておくことで、合成の手間を省き、臨場感を出します。
人物の撮影時、歩く距離を2、3歩に制限することで、グリーンバック撮影の規模を小さく出来ます。

私はこれまでも、「移動」を表現する際に、主観映像を多用しています。
当初は「いきなり主観映像になるのは不自然かな?」と心配で、苦労して人物の体の一部を映り込ませたりしていましたが、「体の映り込み」の有無は客観的に見て印象の差異が無かったので、安心して「合成無しの主観映像」を採用しています。

このように、演出だけを考えるのではなく、特撮の性質を理解し、不自然な合成になってしまう危険を回避しつつ映像の設計をする(カット割りを考える)というのも、なかなか面白いことだと思います。

参考になれば幸いです。

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