映画制作を失敗させないための準備:オーディオドラマで物語を形にしてみる

安全策として音声メディアを完成させる

趣味の映画作りにルールはありません。内容も作り方もかなり自由です。
でも、より大きな満足感・達成感を得たいと思うと、客観的に見て「充分な魅力がある」ということを当然求めたくなります。
実際、勢いで撮影を開始してしまったものの、作っている最中に「あれ?この話、ちょっとおかしいぞ?」というように疑問が湧くことがあります。
なんとか既に撮影している映像が無駄にならないような修正を考えるのですが、「根本的に面白くないのではないか?」という疑念が膨らむともういけません。
最悪の場合、制作が中断してしてしまうことがあります。

こんな失敗をしないために、少し回り道になるかもしれませんが「先にオーディオドラマを作ってみる」という提案をしてみます。

シナリオと映像化の魅力

物語を考えて、それを視覚的に表現しようとするときに必要になるのはシナリオ(脚本)です。
映像設計図としてのシナリオ作成については、私も概要を電子書籍で解説したり、私が主宰する「DIY映画倶楽部」でも、個別に勉強会などをしていますが、大事なことは「映像化すれば何となくサマになるのではないか」という過剰な期待をしないことです。
映像には他にはないチカラがありますが、万能の魔法ではありません。
全ての面において映像の特徴がプラスに働くわけではないんです。

例えば、文章と映像の大きな違いは「時間」です。
小説は文章なので読み手が最も快適なペースで読み進められます。
しかし、映像やオーディオドラマには「固定された時間」があって、鑑賞するペースが強制されるため、鑑賞する人にとって快適でない場合はストレスとして蓄積します。
もちろん、一人一人好みが違うので、一つの完全な正解はありませんが、平均値としての「不快ではない」という形は追求できます。

オーディオドラマへの第一歩

そこで、まずは文章であるシナリオを、「固定時間」に当てはめたコンテンツとしての「オーディオドラマ」に変換してみることをお勧めします。
ここでいうオーディオドラマは、朗読のように、小説の地の文やシナリオのト書きを読み上げたりせず、

  • セリフ
  • ナレーション(あれば)
  • 環境音

だけで構成したコンテンツです。

本格的なオーディオドラマはもちろん奥が深くて、シナリオや演出・録音において技術的にも高いレベルが必要なんですが、ここでは最低限のレベルを想定しています。

その意味では、簡易なオーディオドラマはごく短期間に完成させることができます。
出演者を集めて、ある程度の録音状況を用意した上でセリフのやり取りをしてもらえば、長編映画でも1時間もあれば収録できるかもしれません。
一手間多く掛かりますが、遠隔地にいる人に対して、zoomなどで指示を出しながら個別にセリフを録音することも可能でしょう。

オーディオドラマ特有の難しさは、シナリオの「ト書き部分」の表現です。
映像を見ればそのまま状況が分かる内容でも、オーディオドラマでは音で表現する必要があります。
まずは出来るだけ音だけで表現しようとしてみて、どうしても必要な情報を盛り込めない場合は、ナレーションを加えたりします。

その他、セリフの背景に入れる情景音などを集めて音を重ね合わせながら音声編集をして、オーディオドラマを完成させます。
音声だけの編集の場合でも、映像編集ソフトを使うことをおススメします。

完成したオーディオドラマは、小説やシナリオにはない「固定時間」を持っています。
文章を読んだだけでは判断できなかった

  • テンポの良さや悪さ
  • 表現の長所や短所

がはっきりと判断できます。
「この話は鑑賞する時間を費やすに値するほど面白いのか」ということを客観的に判断できるわけです。
オーディオドラマを聞いて「良く分からなくてつまらなかった」という感想が多い場合は、映像にしてもやはり面白くなることはありません。
その場合は、問題点を検討してシナリオを修正し、まずはオーディオドラマの改訂版を完成させることをオススメします。
映像作品と違って、オーディオ作品は少ないコストで修正もできるからです。
映画は製作期間が長くなってしまいますが、オーディオドラマは慣れれば2~3日で完成します。

そうやって完成させたオーディオドラマは、もちろん、映像化の前の確認用にしか使えない素材ではありません。
オーディオドラマそのものにも根強いファンがいます。
私も大量のラジオドラマの録音ストックを持っているほどの、オーディオドラマファンです。
これからは映像だけでなく音声コンテンツもポッドキャストなどを中心に需要は増えると思われます。
是非、オーディオドラマもコンテンツとして活用してください。

映画化へ

物語の構成や時間配分などを検討した上でオーディオドラマが形になったとします。
そうすると、同じ作品を映画にする場合は、オーディオドラマをある程度下敷きにできます。
「このテンポにすればストレスが少ない」という固定時間の参考値が分かっているからです。
もちろん、映像化に伴って追加・変更を自由に入れていきますが、参考値が分かっていることは安心に繋がります。
基本的にはそれに即して撮影すれば大きな失敗はないからです。

まとめ

まずはストーリーのアイデアを貯めましょう。
そして順次、短期間で完成する「オーディオドラマ」を量産しましょう。
映画製作にはさまざまな準備があったり、季節的なタイミング、関係者のスケジュールなどもあります。
完成したオーディオドラマの中から「条件の合うもの」を順次、映画化していくというパターンを作っておくのもいいかもしれません。
「この作品に協力して欲しい」と仲間を誘うときにも、企画書や脚本だけでなく、オーディオドラマがあると、イメージを膨らませやすくなることは間違いありません。

「オーディオドラマから映画化へ」というパターンは、その一つの可能性を示しています。
皆さんもぜひ挑戦してみてください。
私も実践してみます。

参考になれば幸いです。

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自分で原案を考え、脚本化したストーリーを元に一つ一つのシーンを撮影して形にしていく「自主映画制作」という趣味では、とても大きな満足感を味わえます。
仮に誰にも完成品を見せずに一人で鑑賞するとしても、えも言われぬ達成感、大げさに言えば作品の中とはいえ「世界を創造した万能感」に浸れるのが映画作りです。

さらに、他の人に作品を見せて高評価を得られたりすると、とても嬉しい気持ちになります。

特に現代は自分から情報を発信する手段がたくさんあります。
一般の人が自分で撮った写真や文章を大量に公開する時代です。
公開して得たい「承認欲求」は思いのほか強く、自分で作った映画はその最大級の満足を生み出す可能性があります。

ただ、難点を挙げるとすれば、「写真を1枚撮って画像加工アプリで仕上げれば完了」というような手軽さが「映画作り」には無いことです。
実際にはとても大きな満足感と引き換えに、そこそこめんどくさい作業を伴うのが映画作りです。
(そこがまた、面白いところでもあるんですが)

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