映画製作の裏側:100円ショップのアイテムでミニチュアセットを作る

ミニチュアセットを購入して使う

私は「映画製作=特撮」だと思っているので、いわゆる「特撮シーン」でない「普通のシーン」にも映像合成を中心にした特撮技術を当たり前のように取り入れています。

さらには映像合成にはミニチュアセットを多用します。
これによって、シナリオでイメージしたものに近い構図の映像が完成作品の中に再現できるからです。

例えば、家具などは、そのシーンの雰囲気を作るのに有効なことが多いのですが、舞台演劇のように実物や実物大のハリボテを用意するのはとても大変です。
映像合成が前提であれば、10センチほどのサイズの棚やタンスなどを用意すれば事足ります。
ドールハウスのようなサイズなので、数が増えても保管場所に困りません。
最近では、100円均一ショップでとても精巧に出来たミニチュアが売られています。

私も机や椅子、ベッドなど、自分の作品に使えそうなものを買うようにしています。


最近のそういったミニチュアの大きな特徴として、玩具としてのデフォルメが少ないことが挙げられます。

実は世界一の精密さを誇る日本のプラモデルなども、単純に小さくするのではなくて、あえて「より本物らしく」見えるようにデフォルメされているものなんです。
(製造上の理由から形状を変更・省略している箇所も多くあります)

本来、机のミニチュアなどであれば、玩具としてのコミック的なデフォルメがされていて、各パーツの比率が不自然になり、実写映像に合成しても本物には見えません。しかし、最近の100円ショップのミニチュアは、ほとんど違和感を感じないくらい、コミック的なデフォルメがされていません。
映画の小道具に使う分にはとてもありがたいことです。
同程度のミニチュアを作る時間を考えると、買ってきたミニチュアをそのまま使えることで数十分の一のコストで済むからです。

工作材料を探す・材料コーナー編

とは言え、必要な小道具が全て完成品として手に入るわけではありません。
大半は自作する必要があります。

そこで今度は、材料入手先として、100均ショップを考えてみます。

まずは、そもそも「材料」として売られているもの。
これは

  • 工作用の厚紙
  • 各種粘土
  • 針金
  • 小さな材木

等があります。

もともと100均ショップにもこれらがかなり揃っていて重宝します。
最近は物価高騰の影響が分かりやすく反映されて、例えば造型の定番「フォルモ粘土」などは内容量が随分少なくなっていますし、針金なども元々、それほど長くはないのですが、逆に言うと、ミニチュア工作には丁度いい分量だったりします。
万能ではありませんが、ニスや塗料なども、用途によっては100均ショップの製品性能で充分のことも多いです。
まずは100均ショップの材料は把握しておきましょう。

工作材料を探す・製品流用編

これらの「材料」を使うのはもちろんですが、もう一つ、とても有効な材料探しがあります。
それは、本来は別用途の「製品」を「材料」として使ってしまうことです。

例えば、ミニチュア工作のためにホームセンターで大きな透明のアクリル板を買うより、100均ショップで小さな透明アクリルのカードケースを買って、切って使った方が安上がりだったりします。
その他にも、プラスチック製の板として「クリップボード」「まな板」「園芸用の札」などが使えます。
パズル式になっているフロアクッションや、掃除用のスポンジも、私は素材としてよく使います。

一時期話題になりましたが、木製の小さな「すのこ」も木材として重宝します。
これは大抵、材質が朴という種類の軽い木で、すのことしては強度的に不十分だと思うのですが、分解すると数枚の細い板材と3本ほどの角材がとれます。
これを100円で手に入れる材料とすると、結構お得だったりするんです。

すのこは大抵、水溶性のボンドと金属製の針金で固定されているので、一旦水に浸けてボンドを溶かしてから分解すると、綺麗にバラバラになります。

また、各種玩具の類も、分解・切断して組み合わせた上で塗装し直すと、「何かの装置」というミニチュアセットを手早く出来ます。
最近ではトラックの玩具を分解して逆さまに部品を組み合わせたりして、薬品精製用の機械(らしきもの)を作りました。
映画本編には合計でも20秒程度しか映らないので、こういう「手抜き」で低コストのミニチュアセットを作ることが大事なんです。
私のように、玩具コーナーで商品を手に、何やら考え込んでいる人を見かけたら、恐らく同様のイメージを膨らませている最中だと思いますので、そっとしておいてあげてください。

最近、私が使い始めてとても重宝しているのが、「バーベキュー用の竹串」です。
通常の断面が丸い竹串ではなく、断面が3mm x 6mmで長さが30センチあり、20本入りです。(写真下部はお菓子用の白いパイプ)


この加工の精度がとても高くて、曲がりも少なく、さらに竹特有の強度があって、角材としてかなり使い勝手が良いんです。
2本を貼り合せて6mm角の角材としても良く使います。

2024年製作中の「恐竜霊」では、登場するミニチュアセットの多くにこの竹串を使っています。
機会がありましたらメイキングや本編でご確認いただければと思います。

 

手作りのDIY映画としての面白さの多くの部分は、「どれくらい意外な工夫をしたか」という所によります。
それが、CG映像にはない魅力として、印象に残る理由だと思います。
ミニチュア工作を使うこと自体が大きな工夫ですが、その材料入手でもさらに工夫をしてみてはいかがですか?

参考になれば幸いです。

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自分で原案を考え、脚本化したストーリーを元に一つ一つのシーンを撮影して形にしていく「自主映画制作」という趣味では、とても大きな満足感を味わえます。
仮に誰にも完成品を見せずに一人で鑑賞するとしても、えも言われぬ達成感、大げさに言えば作品の中とはいえ「世界を創造した万能感」に浸れるのが映画作りです。

さらに、他の人に作品を見せて高評価を得られたりすると、とても嬉しい気持ちになります。

特に現代は自分から情報を発信する手段がたくさんあります。
一般の人が自分で撮った写真や文章を大量に公開する時代です。
公開して得たい「承認欲求」は思いのほか強く、自分で作った映画はその最大級の満足を生み出す可能性があります。

ただ、難点を挙げるとすれば、「写真を1枚撮って画像加工アプリで仕上げれば完了」というような手軽さが「映画作り」には無いことです。
実際にはとても大きな満足感と引き換えに、そこそこめんどくさい作業を伴うのが映画作りです。
(そこがまた、面白いところでもあるんですが)

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