スマホで映画を撮るメリットとは?:スマホカメラが向いている3つの理由を解説
画質以前のメリットを考える
動画撮影が歴史上、もっとも身近になっているのが現代です。
一昔前もハンディカムタイプのビデオカメラが一家に一台という感じで充分に普及していましたが、2023年におけるスマホの普及率は驚異の96.3%。
ご存じのようにスマホのカメラでは高画質の動画も撮影できます。
大前提として、誰もがカメラマンとしての環境を持っていることになるんです。
そこで、良く聞かれるのが「スマホでも映画が撮れるの?」という質問です。
結論から言うと、充分撮れます。
「単なる動画と映画の映像は全然違うよ」という、映画ファンもいるでしょう。
人によっては、現在映画館で上映される作品の大半は「映画とは言えない」そうなので、そもそも私の考える「映画」とは定義が違います。
私は、ストーリー性を持って構成された映像作品、いわゆる「ストーリー映像」は全部、「映画」でいいじゃないかという考えです。
そういう意味で「スマホでも映画が撮れる」と言っています。
画面の魅力的要素は「画質」と「画角」
私は30年以上も前から、映画作りの真似事をしてきましたから、偉そうに画質についてもそれなりにこだわった時期がありました。
特に、お金が掛かるフィルム撮影を早々に諦め、ビデオカメラを使って作品を作り始めたことで、ビデオの画質に対しては大きなコンプレックスを持っていたんです。
そこで、何とかしてビデオ映像をフィルムっぽく見せる工夫は無いものかと自己流に実験したり、プロの映像業者がビデオ映像を疑似的にフィルム風に加工する方法を教えてもらったりしていました。
その探求自体は楽しかったのですが、ある時期からハタと、「自分たちは画質にこだわる段階には到達していないぞ」と気付きました。
そもそも、作品がある程度面白くないと、第三者に鑑賞してもらえないんです。
他の人たちが作った作品をみても、画質がフィルムっぽい魅力などよりも、「バカバカしいけど面白い」というビデオ作品の方がはるかに魅力が大きいことを再認識してしまったんです。
時代は流れ、ビデオ映像の画質は飛躍的に向上しました。
「映画はフィルムで撮るもの」というこだわりを持っているのは、スピルバーグと山田洋次くらいになりました。
実際、8mmビデオやデジタルテープに録画していた頃のビデオ映像に感じられた「安っぽさ」は、今のビデオ映像には感じられないレベルになってきたんです。
編集時に画質の調整ができることもあって、ビデオ映像における画質への劣等感は払拭出来たと思います。
画質とは別に、映画の画面の魅力に「画角」があります。
分かりやすく言うと、人が普段見ているような視野の映像を中心に、望遠鏡で見たような「望遠」、レンズの特性を利用して、より広い視野の映像を作り出す「広角」があります。
映画はこれらの映像の特性を上手く組み合わせて作っていきます。
そして実際に映画を作ってみると分かりますが、「広角」の映像の魅力が大きいんです。
一つの映像の中に多くの要素を詰め込めることと、構図的に面白く作りやすいことを実感できます。
映像設計に魅力があって人気がある実相寺昭雄監督作品などを見ると、広角の映像をとても多用している事が分かります。
スマホカメラの特徴と映画への活用法
具体的にスマホカメラで映画の撮影をする場合のことを考えてみましょう。
スマホカメラで動画を撮る際の最大の弱点は、長時間の連続撮影が出来ない点です。
動画を撮影すると発熱が激しいので、ステージ映像を全部録画する、という事などは難しいんです。
その点、映画の撮影は、基本的に数秒ずつ細切れで行いますから問題ありません。
逆にメリットが3つ考えられます。
広角レンズであること
これは、前述の画角の特徴です。
映画をビデオカメラで撮影するときに、私はかなりの比率で「ワイコン」というレンズを装着して、広角の映像を作ります。
これも前述のように、広角レンズならではの魅力が大きいからです。
ところが、スマホのカメラは、そもそもが広角レンズなんです。
カメラを起動してみれば分かりますが、カメラに映り込む範囲がかなり広いと思います。
つまり、普通に撮るだけで、画角的に魅力のある「広角映像」が撮れているんです。
失敗しにくい
これは、広角レンズであることとも関連するんですが、撮影の失敗が少ないという特徴があります。
さっと出して手軽に撮影しても、最低限、見られる映像で記録できることがスマホのカメラのに求められる基本性能です。
そういう意味で失敗がしにくいんです。
また、本体の形状的にも失敗がしにくい特徴があります。
ハンディカムは慣れていない人ほど片手で持って撮影するので、回転ブレがひどくなりがちなのに対して、スマホで撮影すると自然と両手で持つのでブレが出にくいんです。
もともと、広角レンズで撮影すると手振れが目立たない、という特性もあります。
基本的には明るさもピントもオート撮影になるため、大失敗の映像にはなりにくいと言えます。
誰もがいつでも持っている
「今日は帽子を持って来なかった」ということはあっても「今日はスマホを持って来なかった」ということはないでしょう。
基本的に連絡ツールですから、いつでも携帯しているわけです。
そうすると、撮影予定日以外でも「この景色は使える!」と思ったときに、すぐ撮影できます。
実は映画を作ると、こういう「役者抜きでも撮影できる映像」がたくさん必要で、ついつい撮影を後回しにするため、最後までそれが未撮影リストに残ってしまったりします。
絵コンテを用意して、関係者にも手分けして撮影してもらうようにすれば、入手も楽になるでしょう。
「自分が撮影した映像が作品に使われた」というのは嬉しいものです。提供する側の満足度も上がります。
現場に複数のカメラとカメラマンが存在するということになるので、工夫すれば部分的には「マルチカメラ撮影」も出来るかもしれません。
カメラに何らかのトラブルが起きても、別のスマホのカメラで撮影する事も出来るというのは安心にも繋がります。
もちろん、スマホは機種によって画質が異なりますから、複数のスマホを使う場合は、それぞれのカメラの性能を確認しておくことは必要ですし、スマホの通常の使い方に比べてバッテリーの消耗が激しくなるので、充電器やポータブルのバッテリーも必要になります。
参考になれば幸いです。
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自分で原案を考え、脚本化したストーリーを元に一つ一つのシーンを撮影して形にしていく「自主映画制作」という趣味では、とても大きな満足感を味わえます。
仮に誰にも完成品を見せずに一人で鑑賞するとしても、えも言われぬ達成感、大げさに言えば作品の中とはいえ「世界を創造した万能感」に浸れるのが映画作りです。
さらに、他の人に作品を見せて高評価を得られたりすると、とても嬉しい気持ちになります。
特に現代は自分から情報を発信する手段がたくさんあります。
一般の人が自分で撮った写真や文章を大量に公開する時代です。
公開して得たい「承認欲求」は思いのほか強く、自分で作った映画はその最大級の満足を生み出す可能性があります。
ただ、難点を挙げるとすれば、「写真を1枚撮って画像加工アプリで仕上げれば完了」というような手軽さが「映画作り」には無いことです。
実際にはとても大きな満足感と引き換えに、そこそこめんどくさい作業を伴うのが映画作りです。
(そこがまた、面白いところでもあるんですが)